正解おめでとう!!
クイズに正解した皆様、おめでとうございます。過去にプレイした作品の情報をしっかり覚えているなんて、とても頭が良いですね。もっとも、シモンには劣るかもしれません。

今日でDailySAEKOは4日目!この連続投稿は7日間の企画なので、いよいよ折り返しです。始まる前は書く内容がなくなっちゃうかなと思ったんですが、いまはむしろ書ききれなくて困っています。まあ、来年以降もSAEKOについて話すチャンスはあると思うので、小出しにしていくくらいでいいかも。
というわけで、今日はシモンとアカリが引き出しに来る日ですが、アカリについてはプロトタイプシナリオとの兼ね合いや、現代のインターネットでは許されないであろう設定などもあり、このタイミングで詳細を書くのはやめておこうと思います。アカリファンの人ごめんなさい。裏を返せば、今後アカリが登場するシナリオがまだ残っているということなので、それで許していただければ......。(同じ理由で、チオやリンの記述も少なめになります。すみません)
さて、3日目のテーマは「プレイヤーに誰かを殺させる」ということで、プレイヤーはキナとユイの選択に迷いまくって欲しいと考えていました。では、4日目は?
4日目のテーマは、「プレイヤーを殺人に慣れさせる」というものでした。...本来は。
前日の夜、リンは冴子との買い物デートを経験して、普通の可愛い女の子としての冴子の顔を覗きました。そして次の日、リンは今日も管理人として誰かを冴子に差し出す必要があります。また誰かが消えるんだけど、どこか少し慣れてしまって、昨日ほどは悩まずに済む。
そこで、4日目に登場するキャラクターはキナとユイほど魅力的ではなく、「こいつ殺しちゃお〜」とプレイヤーが思ってしまいそうなキャラにしました。そう、そしてそれがシモンです。

シモンはナルシストのお兄さんです。自分を知的で特別な人間だと言っていますが、後ほどケータイ小説作家であることが判明します。設定としては、客観的に見れば彼はフリーターで、趣味のケータイ小説で出版の話が決まって調子に乗り始めていた...というふうに考えていました。(そう、なので今日のクイズの正解は2つあるのだ!)
ゲームに登場するキャラクターの中で、一番書くのが大変だったキャラは冴子です。特に夜の雑談では、「冴子が言いそうなこと」を考えるのにとても苦労しました。ずっと1人で喋るし、自分のプライドに反することは言わないだろうし...。原案の存在もあって、「キャラクターが勝手に動き出す」経験はほとんどしなかったです。
対照的なのはシモンで、自己中で嫌なヤツとして作ったはずだったのに、書いてるうちにどんどん勝手に喋りだし、最終的にはリンの良い友人になってしまいました。ケータイ小説を書いている、しかも女性に人気、という設定のせいだと思います。ヒットする小説が書けているということは、他人の気持ちは分かっているわけで、さらに振る舞いには自信が満ち溢れていて、一度仲良くなればこれほど心強い友達はいません。夏のビーチに連れてってくれるし、海の家でナンパもするし、でもしっかり自分たちと同数の女子グループを狙ってくれるでしょう。
...そういうシチュエーションって存在するのかな?現実で行ったことないから全然わからないです。
そんなわけで、シモンのキャラは当初の想定からズレていき、死亡演出は書くのにとても苦労しました。キナもユイも攻撃的な部分はあるけど、シモンにはそういうのが無いからです。適当に書いてみたら、「シモンがケータイ小説家であることを認め、自己作の良さを力説しながら死ぬ」というテキストが出来上がってしまって、すぐにボツにしました。ケータイ小説全体を茶化すような解釈は絶対に避けたかったからです。
(余談:シモンのキャラの原型として、過去には哲学者キャラや詩人キャラが存在しました。哲学者は縮小現象に関する存在論的な問題を提起し(「人間のみを狙って縮小するということは可能なのだろうか?人間主体、すなわち<私>の境界は必ずしも明確ではない。3分前に咀嚼して嚥下した1枚の生ハム、これは<私>の一部だろうか?膀胱にある排泄物は?爪や髪の毛、さらに日常の生活においては身体の延長として扱う眼鏡や衣服は?」)、詩人は冴子の美しさについての比喩を並べ、死ぬときには辞世の句を詠むという設定でした。ただ、どちらも同じように属性全体を傷つける可能性があって難しかったです)
結局、シモンはこれまでの小人と違い、いいヤツとして死ぬことになりました。「頭が良くなる方法は、他人の気持ちを理解することだ」と言い、5日目まで生き延びさせると、冴子に対しても手を差し伸べようとします。あまり感傷的になりすぎないように、女性周りの話で調整していますが、それでもこんなに良い人間になってしまうとは思いませんでした。制約の多いゲームのシナリオで、「キャラクターが勝手に動き始める」みたいな経験ができるとは...。
ところで、シモンを食べたあとの冴子のセリフがとても好きです。

4日目とは直接関係ないですが、ケータイ小説の「コーラ・フロート」について。リアルタイムで流行っているとき僕は小学生くらいだったし、その時も「女子高生に大流行!それ以外は大否定!」みたいな感じだったので、実際のケータイで読んだことはありませんでした。
ただ、2008年を舞台にSAEKOを書くにあたって、ケータイ小説を入れないわけにはいかないと思ったので、検索で引っかかったアーカイブ作品を頼りに書いた記憶があります。特にクリーム・ソーダと恋空は文体や展開でとても参考になりました。現実のケータイ小説は当時のいわゆるヤンキー文化を引き継いでいて、暴力や未成年飲酒、薬物などの話題が頻繁に登場します。もちろんセックスもレイプもある。SAEKOのケータイ小説も、当初はそのくらいはっちゃけるつもりだったのですが、シモンが作者であるという設定を受けて、マイルドな方向に変化しました。シモンもランキングに載るには過激な展開を入れるのが一番だと分かっていたけれど、あえて信念に基づいて優しい展開を選んだ...というふうに考えられるかなと思います。

ケータイ小説はシモンが登場してから更新が止まりますが、ゲーム最終盤の7日目、なんとエンディングが公開されます。作者は誰なのか?少なくともシモンがひそかに生きている...という展開ではありません。日本語では、シモンによる文体と、エンディングの文体は微妙に異なっています。
じゃあ、それなりにケータイ小説が分かって、シモンの執筆環境にアクセスできる人って...うーん、誰だろうね?